ボトックス注射

ボトックス注射とは

筋肉や汗腺、皮脂腺の働きを数か月抑制する注射です。
麻酔を必要とせず、人体に安全な薬剤を極細の針で注射し、しわ・エラの出っ張り・多汗症などのお悩みの改善をはかるものです。３か月～半年程度で効果が切れ始め元に戻るので、その状態をキープしたい方は効果が切れたら繰り返しの施術が必要です。

ボトックス注射で使う薬剤

ボツリヌス菌が産生するA型ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシンと呼ばれる蛋白分解酵素)を処理し人体に無害なものとした薬剤です。菌そのものは含まれません。1800年代にボツリヌス毒素の様々な研究がされ、時を経て1977年にアメリカのScottがボツリヌストキシンを斜視の治療に使用しはじめました。現在では瞼や顔の痙攣などに対しては保険診療で用いられ（厚生労働省の認可あり）その安全性が確立されています。

ボトックス注射の作用原理はアセチルコリン放出の阻害です。筋肉が収縮したり汗腺が汗を分泌するためには、それらに向かって伸びている神経からアセチルコリンという神経伝達物質を受け取る必要があります。Ａ型ボツリヌス毒素はアセチルコリンが神経から筋肉などに向かって放出されるのを妨げるため、下記の効果を発揮します。

ボトックス注射の効果

・しわ（額、眉間、目尻、顎の梅干し、首のしわ）の改善
・エラの出っ張り（咬筋）の縮小
・口角を上げる、ガミースマイルの改善など表情の微調整
・多汗症の軽減（多汗症ボトックス）
・顔の皮脂の抑制、皮脂詰まり毛穴の改善
などの効果が期待できます。効果は注射後数日してから見られるようになり、2週間経つ頃にはしっかり薬剤の効果がでます。

例えば額の横じわを改善したい場合は、額のしわは眉毛を上げる前頭筋によって作られているので、そこに注射し前頭筋の働きを弱める（全く働かなくなるわけではありません）事で額にしわがつかないようにします。表情じわの深さ・多さはその表情をした回数に依存しますので、話す時に表情を豊かに動かす方は同年代の中で比較すればしわが早く目立ち始める傾向にあり、比較的若い年齢からボトックスを希望されたり施術適応になる事があります。深く刻まれると取りづらくなるので、しわが少しでも気になりはじめたら悪化予防も含めて早めに対策しておくと良いでしょう。

逆に、真顔状態でもしわが癖になって刻まれている方はボトックスを打っても真顔状態でのしわをなくす事はできず、折りしわのついた皮膚そのものを改善する必要があり、ダーマペンやヒアルロン酸など他の治療法が候補に挙がってきます。これは人により異なりますので、気になるしわなどがある方はまずは一度診察にお越し下さい。

皮脂詰まり毛穴にはマイクロボトックス

極少量のボトックスをダーマペンや極細の注射器で毛穴の皮脂腺の部分に浸透させると、皮脂腺の働きを3-6か月抑制し、脂性肌の方の皮脂分泌を減少させる事ができます。皮脂詰まり毛穴にお悩みの方にお勧めです。また、首や顔全体のマイルドなリフトアップにも効果があります。

ボトックス注射の施術間隔と治療回数

持続期間は個人差はありますが3〜6か月程の事が多く、その期間が過ぎると元に戻りますので、キープしたい方は切れ始めた段階で再度施術を行う必要があります。エラの縮小などでは、何度か施術を繰り返すと全く元の大きさには戻らずある程度小さいままにすることができますが、額や目尻などの薄い筋肉は、何度やってもほぼ元の状態に戻ります。

ボトックスをあまり頻繁に施術すると、自身の体にボツリヌストキシンに対する中和抗体ができてしまいボトックス注射が効かなくなる事があります。なので毎月打つのではなく、最低でも3〜4か月は間隔を空けて、効果が切れてから次のボトックス注射打つ事をお勧めします。もしボトックスに対する中和抗体ができてしまった場合、10～36ヶ月間隔を空けると抗体が消え再び効く事があるとされていますので、暫くお休みしてみるということになります。ボツリヌストキシンにはA型とB型があるので、A型で抗体ができてしまった方はB型に変えてみるのも手ですが、A型よりB型の方が抗体がつきやすいとされているので、A型で抗体ができるお体の時点でB型ではより抗体ができやすい可能性と、B型の製剤は効果持続期間が平均1か月程度と短い事を事前に知っておくべきです。

ちなみに、3〜4か月の間隔をあけずもっと短期間に打っても中和抗体がとてもできにくい「ゼオミン」というボトックス製剤があります。料金が少し高くなってしまいますが、どうしても頻繁にいろんな部位をちょこちょこやりたい方は検討してみても良いでしょう。当院でもご希望があればご用意致しますのでご相談下さい。

治療の流れ

施術部位は何も塗らずにお越し下さい。ご事情によりメイクをしてご来院される場合は、予約時間より10分程早めにお越し頂き事前に院内でメイクを落としてお待ち下さい。

施術部位の数によりますが、注射は５分程度で終わります。当院では美容外科などで使われる34Gの極細の針を使用しますので、より少ない痛みで施術を受けて頂けます(部位によって針の種類、長さは変更致します)。術後は注入部位をマッサージしないようにして下さい。

ダウンタイムとアフターケア

・ダウンタイムはほとんどありません。当日は過度の飲酒を避け、また術後2日間は激しい運動や入浴は避けて下さい。注射による施術なので針穴からの少量の出血や内出血が生じる事がありますが、自然に軽快していきます。

・注入部位のフェイシャルマッサージは3日後以降から可能です。施術後数日にわたって注入部位に違和感を感じたり、効果が徐々に出始める過程で一時的に部分的に不均等な効果の出方をする事がありますが、2週間程かけて注入部位全体に十分に効果が発現するのをお待ち下さい。2週間経った時点で明らかに効いていないと思われる部分があれば、診察の上必要があれば修正致しますのでご連絡下さい。

・ボトックス注射後３日間は献血を避けて下さい。
・妊娠する可能性のある方は、ボトックスの投与中および最終投与後の 2 回の月経を経るまでは避妊するようにして下さい。男性は、ボトックスの投与中および最終投与後の少なくとも 3 ヵ月は避妊するようにして下さい。

メイク、洗顔、入浴

【メイク】
注入部位のメイクは６時間後から可能です。注入部位以外は直後から可能です。

【洗顔】
当日から可能ですが、注入部位は強く擦ったり押さないようにして下さい。

【入浴】
シャワーは当日から可能です。入浴は3日後より可能です。

リスクと副作用

たまにあるもの：筋力低下、微細な出血、内出血、
ごく稀にあるもの：疲労感、頭痛、顔面神経麻痺(元に戻ります)

注入部位によっては一時的に口の渇きやドライアイが生じる事があります。

施術を避ける箇所、受けられない方

・妊娠中、妊娠の可能性がある方、授乳中の方
・ボトックスにアレルギーのある方
・筋萎縮性側索硬化症や重症筋無力症など、全身性筋力低下の疾患のある方

他施術との比較

・ヒアルロン酸注射：表情を動かさなくても真顔の時に額や目尻などに刻まれたままの深いしわはボトックスでは改善できず、皮膚の下にボリュームを持たせてあげる事でしわを目立たなくするためにヒアルロン酸注射などが必要になります。